ガタゴト馬車に揺られて数時間後。
「司祭様、間もなくイーノックカウに到着いたします」
馬車の窓からお外をぼ〜っと見てたら、前の小窓が開いて御者さんがもうすぐ着くよって教えてくれたんだ。
だから僕、窓からお顔を出して前の方を見たんだけど、そしたらほんとにイーノックカウのすぐそばまで来てたんだよ。
でもね、僕はそれを見て、あれ? って思ったんだ。
「ねぇ、司祭様」
「ん、なにかな?」
「この馬車、いっつも通ってる西門とは違うとこに向かってるけど、もしかして東門がある方まで行くのかなぁ?」
こないだみんなと来た時は、人がいっぱいならんでるおっきな門の方に向かってったんだよね。
でもこの馬車、何でか知らないけどその門とは別の方に向かって走ってるんだもん。
だから僕は、錬金術ギルドから呼ばれたって聞いてたけど、もしかしたらその前にロルフさんちによるのかな? って思ったんだ。
「東門? いやいや、イーノックカウの東門はその外側にも土地が広げられて新たな壁が作られておるからのぉ。さらにその向こうの門にまで行こうと思ったら、それこそ日が暮れてしまうぞ」
「じゃあさ、どこの門から入るの?」
だけどね、司祭様にそれを聞いたらすっごく遠いからそんなとこまで行かないよって。
じゃあどっか他の門へ行くのかな? って思った僕は、お爺さん司祭様に聞いてみたんだ。
そしたらね、西門から入るんだよって言われたもんだから、僕、びっくりしちゃったんだよね。
「でもでも、この馬車、西門に向かってないよ」
「ああ、この馬車は多分、貴族や大商会の者などだけが通れる特別な門に向かっておるのだろう」
そっか! そう言えばこの馬車って、領主様の馬車を借りたんじゃないかって言ってたよね。
って事はさ、いつもは領主様が乗ってるって事だもん。
そんな馬車を僕たちと一緒に並ばせるなんて事できないから、こういう馬車が通るための門があるのか。
それに気が付いた僕は、もういっぺん窓から前の方を覗き込んでみたんだよね。
そしたら前の方に、みんなが並んでる西門よりはちっちゃいけど、すっごく立派な門があるのが見えたんだ。
「ほんとだ! 司祭様。前に門があるよ!」
「そうであろう? 実を言うとわしもな、この街に来るときはこちらの門を通って中に入っておるのだよ」
「司祭様も、こっちの門を通るの? いいなぁ」
僕たちがイーノックカウに来る時は、村からここまで時間がかかっちゃうからいっつもこれくらいの時間なんだよね。
だから朝とか夕方みたいにすっごく混んでるなんて事は殆どないんだけど、それでも何人かは並んでるから街に入るまでに結構時間がかかっちゃうんだ。
でもこっちの門はだ〜れも並んでないんだもん。
これだったらすぐに入れちゃうから、絶対こっちの方がいいよね。
そんな事を話してたら、僕たちの乗ってる馬車が門のとこまで辿り着いたんだ。
だから僕、慌ててポシェットからお金を出そうと思ったんだよ。
だって街に入る時には、お金を払わないといけないんだもん。
でもね、
「あれ? 司祭様。この馬車止まんないよ!」
馬車は門に入る前にちょっとだけ遅くなったんだけど、でもそのまんま止まらずにイーノックカウの街の中まで入ってっちゃったもんだから、僕、すっごくびっくりして司祭様にそう言ったんだ。
「ああ、他とは違ってこの馬車は止まる必要は無いのだ」
そしたらお爺さん司祭様は笑いながら僕の頭をなでて、何で止まんなくてもいいのかを教えてくれたんだよね。
「この門を通る事ができる馬車でも、普通は一度止まって門兵の審査を受ける決まりになっておる。だがな、この街に住む貴族や各ギルドマスターなどの街の中枢路になう者たちの馬車は、例外的に止まらずに通り抜けることができるのだ」
「そっか! この馬車は領主様から借りたもんだし、僕たちを呼んでるのはロルフさんたちだもんね」
貴族様の馬車が止まんなくてもいいんだったら、領主様の馬車が止まんないのは当たり前だもん。
それに僕たちは錬金術ギルドに来てって言われて、その馬車に乗ってきてるでしょ?
だからきっと、この馬車も止まんなくっても大丈夫って事なんだね。
「あっ! でも司祭様。お金は? 街に入る時は、お金を払わないとダメなんだよ」
「ああ、それも大丈夫。この門を通れるものは入街料を払わずとも良い事になっておるのだ」
僕たちが街に入る時に払ってるお金なんだけど、あれってここに住んでる人は払わなくってもいいんだって。
それにね、森に行く時に冒険者ギルドでもらってくるお札を持ってると、やっぱり街に入るのにお金がいらないでしょ?
あれとおんなじで、街の人の用事があるよって呼ばれた人は、手紙やギルドの木札みたいにその証拠を持ってればやっぱり払わなくってもいいんだってさ。
「先ほどの門をくぐれる馬車に乗っておる者は、みな貴族かこの町の有力者に連なるものだ。となれば入街料を払わねばならぬものなど、おるはずが無かろう?」
「そっか。だからお金もいらないんだね」
そう言えばロルフさんちから錬金術ギルドに送ってもらう時も、東門で通ってもいいよって言うカード、見せた事ないもん。
あれもきっと、ロルフさんとこの馬車に乗ってきてるからなんだろうなぁ。
僕はストールさんに送ってもらってる時の事を思い出して、一人でうんうんって頷いてたんだ。
あれ? イーノックカウには着いたけど、なぜか門をくぐったところで終わってしまった。
ここにこんなに文字数を使うつもりはなかったんだけどなぁ。
う〜ん、やっぱり私には話をうまくまとめる才能は無いようです。
一向に話が進まないこの物語ですが、これからも我慢してお付き合い頂けると幸いです。